あなたは、最期をどこで迎えたいですか?

 今から約50年前、1950年代までは、実は在宅での死亡率は8割を超えていました。しかし、2005年統計では、病院死が82%、在宅死が12%です。しかし、現実には多くの人が住み慣れた自宅で死にたいと言いながら、なぜ在宅で全うできないのでしょうか?ある調査によると、最期は「家族に迷惑をかけたくない」が約8割、「死の恐怖や死 までの過程の不安」が約6割となっているそうです。だからこそ、私たちはこの心配や不安をできるだけ軽減し、地域の在宅チームの一員として住み慣れた自宅での暮らしをサポートしたいと考えています。

在宅ターミナルケアとは?
 

 癌、脳卒中、心臓病、老衰、難病などの末期状態にある患者及び家族に対し、その生活の質(QOL)の向上のために在宅において行うケアのことです。その目標は全人的な観点から患者さんの身体的、精神的苦痛の緩和や日常生活の援助、患者さんと家族に対する精神的、社会的支援であり終末期の患者さんと家族に最もよい生活環境 を提供することにあります。もちろん患者さん個々の希望はあるとは思いますが、人生の最期の貴重な時間を過ごしている患者さんが,点滴など受けながら病院の白い天井ばかり見ながら寝て過ごすのは,人間として尊厳のある生き方でしょうか?

 私たちは、患者さんの住み慣れた自宅において、死を前にした患者さんとその家族に、「よりよく生きる」ために援助いたします。そして患者さんや家族の心理、生活状況を考慮した上で一人一人に合わせたケアを考えていきます。残された時間が穏やかでかつ意味のあるものに出来るよう、疼痛コントロール、その他症状緩和、心のケア(家族の精神的なケアやスピリチュアルケアも含む)を行い、患者さんや家族と共に「その時間」を共有したいと考えています。



地域における在宅ケアチーム

 これまでの効率を優先してきた医療と比べてみると、在宅医療は患者さんやその家族にあわせて「多様性を容認した医療」です。これは一人一人に十分な時間と手間をかけることを意味しているため、このケアを行うに際しては、患者さんの意志を尊重し、家族の意見を踏まえながら、医師、看護婦、ケースワーカー、心理職など保健、医療、福祉の専門職やボランティアがチームを組んで患者と家族によりよいケアを提供することが必要です。

 また、在宅ターミナルケアに必要なのは(1)病名告知(2)患者及び家族の教育(3)訪問看護またはヘルパーなどのマンパワー、社会資源の利用(4)病院のバックアップ、と言われています。
この中で患者さんご本人、ご家族、在宅医療を担う医師にとっても、いつでも必要なときに病院がバックアップするという保障はとても重要です。在宅ターミナルケアの真の価値は在宅で最後を迎えることではありません。そのことにこだわり過ぎると多方面で歪みを生じますので、在宅での療養が限界と感じたら入院治療の相談もできます。もちろん最後は病院で迎えても良いと考えます。大切なのは、患者さん自身がその人らしく生き抜くために、必要なバックアップの体制が整備されていることです。